物語や映画の世界では、幾度となく地球や人類が消滅の危機に瀕します。瀕するどころか本当に滅亡し、絶望のうちに幕が降りることも。珍しくもない古典的なテーマですが、本当にそのような状況下に自分自身が身をさらされた時、「残されたわずかな時間の中で、何を大切に思い、自他の人生に対して、どのような接し方をして過ごすのだろう」などと、静かに想起させてくれる作品にめぐりあえるのは、とても稀有なことのように思います。
今回ご紹介する2012年公開の映画『エンド・オブ・ザ・ワールド(ローリーン・スカファリア監督/フォーカス・フィーチャーズ配給)』は、地球滅亡が確定した世界の喧騒のなかで、平凡な男女が、他者への思いやりと新たな愛を育んでいく過程を描いた、ロマンチックな作品です。
数週間後、地球に小惑星が衝突することを察知した人類は、最後の希望を大気圏外での破壊計画に託しますが、あえなく失敗。アメリカのとある街で保険会社に勤めるドッジ(スティーヴ・カレル)は、その事実をラジオ放送で知り、一緒に聞いていた妻は無言でドッジの元を立ち去るのでした。
残された時間を、独り身で過ごすことになったドッジ。
友人に招待された乱痴気騒ぎのパーティに参加するも、一緒にバカ騒ぎする気にはなれません。
そんなある日、アパートの隣人女性ペニー(キーラ・ナイトレイ)が嘆き悲しむ姿を目撃したドッジ。彼女は、イギリスに住んでいる両親や兄弟姉妹に会いに行く機会を逸してしまったことを、とても後悔していました。親身に身の上話を聞いてあげたことで、ドッジはペニーと仲良くなります。
終末が近づくにつれて、ドッジが暮らす街も暴徒たちの破壊にさらされ、街のあちこちで火の手があがりました。身の危険を感じたドッジは、ペニーを連れて命からがら住み慣れた街を脱出します。
さて、終末までの残り少ない日々。その瞬間を誰と迎えたいか。ふたりは思いを巡らせます。ドッジは、数週間前に手紙をくれたかつての恋人のことを考えていました。そしてペニーは、故郷で暮らす家族のこと。お互いの大切な人との再会を最後の願いとして、ふたりの旅がはじまりました。
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