「引退馬問題」は、さまざまな価値観が交錯する社会課題の縮図である。

来年は午年です。厳密には丙午(ひのえうま)ということになりますが、「丙」が「活発な火」を表す文字であることに加えて、「午(馬)」は本来、エネルギッシュで独立心旺盛な動物ですので、丙午の年は「より活動的な勢いに満ちた年」になるのだそうです。

 

馬といえば、今秋の民放ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」が話題になりました。世界一の競馬大国日本。経済規模3兆円超とも云われる巨額マネーが動く競馬産業を舞台に、馬主をはじめとする競馬関係者たちの熱い闘いが描かれている作品です。血統を背負って懸命な勝負に挑む競走馬と人間、彼らが織り成す深い絆や信頼関係も、大きなみどころのひとつです。

 

現役の競走馬を巡るきらびやかな物語の影で、引退後の競走馬の処遇に、馬主が頭を悩ませるシーンも散発的に描かれています。

実はこの「引退馬問題」に関して、馬事関係者や一部の競馬ファンを中心とした世間の意識が、この数年で変貌しつつあります。

 

「引退馬問題」を、「引退した競走馬の余生が確保されていない問題」として再提起したのが、起業家で映画監督の平林健一さんです。平林さんは自主製作映画今日もどこかで馬は生まれるや、著書サラブレッドはどこへ行くのか 「引退馬」から見る日本競馬/NHK出版新書刊で、この問題を大きく扱ってきました。

 

2歳でデビューする競走馬が現役でいられる期間は、長くても8年程度ですが、彼らが持つ本来の寿命は最長で30年と云われ、引退後の馬生の長さを思わせます。現役時代に、生涯獲得賞金で数億円ものお金を稼ぎ出した馬でも、引退後に自分の飼育費用を充分に稼げる個体はわずかひと握り。多くの引退馬が、余生を保障されていない状況にあるわけです。

 

競馬業界では、長らく「引退馬のその後は追うな」という暗黙の了解がありましたが、平林さんは、そのような放置意識に対して、現状を発信することで異議を唱えています。

 

この問題には、経済的な観点から倫理的な観点まで、さまざまな価値観が内包されており、まるで難解な社会課題の縮図のようです。

「人ひとりの力は無力だ。だからこそ、肩肘を張らずに思ったことを発信したい。そしてそこで生まれた反応に対して、考え、発信を続ける。全方位的な正解はないのだから」

引退馬問題に心血を注いだ数年間、悩みに悩み抜いてきた平林さんの、覚悟のほどが伺える言葉です。

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コメント: 2
  • #1

    倉掛未加子 (日曜日, 28 12月 2025 23:44)

    視聴してみたいです。

  • #2

    追立直彦(管理人) (月曜日, 29 12月 2025 15:15)

    コメントありがとうございます!
    「ザ・ロイヤルファミリー」はネットフリックスなどでも配信しているので、ぜひご覧になられてください。