クリスマスの本質に迫った、ささやかな奇跡の映画『ノエル』をご紹介します。

今回は、ちょっぴりビターなクリスマス映画をご紹介。

2004年公開の映画『ノエル(C・パルミンテリ監督)』という作品です。※上記リンクを押すと予告動画に遷移します。

 

イヴのニューヨーク。

心が荒んでいるわけではないけれど、どうしようもないほどに孤独。そして自分自身の人生に積極的に踏み出せないでいる。そんな悩みを抱える幾人もの男女が様々に出逢い、ささやかな奇跡に導かれます。魂の祝祭としてクリスマスを描き切っている、大人の童話です。

 

ローズ(スーザン・サランドン)は、ニューヨークで暮らす雑誌編集者。過去に結婚していた時期もあったけれど、両親の相次ぐ介護がもとで今は独身生活。父親は既に亡くなり、重度のアルツハイマーを患う母親を、日々献身的に介護している。

 

イヴの日、ふと隣の病室が気になって中を覗くと、ベッドで植物人間状態の患者が眠っている。部屋の中は殺風景で、見舞い客もいない。憐れに思った彼女が、母に買ってきた天使のオブジェを飾ってあげようと病室に入ると、ドアの脇に、感じの良い中年男性(ロビン・ウィリアムズ)が。驚き当惑するローズに、男は優しく微笑む。

 

一方、警官のマイク(ポール・ウォーカー)は、幸せの絶頂。イヴに街角でナンパした情熱的な女性ニーナ(ペネロペ・クルス)と、只ならぬ関係になったからだ。

 

デートの後、カフェに寄ったマイクは、不思議な給仕係に遭遇する。その老人が彼に送るまなざしは、まるで最愛の恋人に再会したかのよう。雪が降りしきるその夜、老人はマイクの自宅に現れ、思いも寄らない告白をする。「君は、死んだ妻の生まれ変わりなんだ」と。強烈な嫉妬が原因でニーナと大喧嘩した直後のマイクは、その告白に冷静さを失い、激しく老人を責めたてるが、それはさらに予期しなかった方向に二人の関係を運んでいく……。

 

ローズも、そしてマイクも、自身の弱さを知りながら、それを直視出来ないでいます。けれども、隣人に心を開き、誰かを許す機会を得られたことで、二人の人生は、ささやかな新しい一歩を踏み出す強さを得ることに成功します。「奇跡」を受け入れる勇気が、彼らをそこに導いたのでしょう。

 

クリスマスは、日常生活で縮みこわばっている心に、「奇跡」という灯火を受け入れさせる寛容さを呼び覚ます、そんな祝祭であってほしい。不思議な余韻を感じさせてくれる、魔法のような映画です。